みなさん、こんにちは。
今年もエアギターシーズンがやってきました。
7月14日は、鹿児島市で日本エアギター選手権2019決勝大会が開催されます。
それに先立ち、奄美予選を観てきました。
海と空がつながってしまいそうなほど青く美しく、太陽が惜しみなく降り注ぐ奄美!での初めてのエアギター観戦。
そこで感じた楽しさと可能性を綴ります。
<この記事のお品書き>
1.エアギター日本選手権奄美大島地区予選
2.エアギターの5つの楽しさ
3.来週決勝を観ようと思ったあなたへ、エアギター観戦の秘訣
4.おまけ―奄美大会録
・出場者紹介
・審査員の目‐エアーに何を見る?
・観客の目‐初めてのエアーに何を見た?
1.エアギター日本選手権奄美大島地区予選
目に見えないギターを“持っている体”で演奏するエアギター。
日本では2005年に始まった公式大会が、ついに、奄美に初上陸しました。
・6月30日、ライブハウス「マヤスコ」(奄美市名瀬)
・出場者6人(島外2人、島内4人)、審査員5人(日本エアギター協会幹部ら)
観客約20人(ほとんどがエアギターを実際に観るのは初めて)
・演奏者は自分で用意した1分間の音楽の中で、自由に演技します。
オリジナリティ、リズム感、カリスマ性、テクニック、芸術性と“エアーな感じ”が評価ポイントです。
・結果:「初代島のナポレオンマン」と「エアネスサイゴウ」が決勝進出決定
2.エアギターの5つの楽しさ
…を語る前に、なぜ奄美までエアギターを観に行くことになったのかを書き留めておきます。
そもそも、私は楽器をしたことがありません。楽器をできる人はすごいなあと思っていましたが、“エア”ギターという実際にはないものを弾くことに熱くなる気持ちはよくわかっていませんでした。
そんな私が、エアギターに触れたのは昨年10月。まちづくりの仕事をする方の取材に伺うと、その方が鹿児島のエアギタリスト「エアネスサイゴウ」さんでした。まちづくりについて取材をするはずが、「片手を腰に当てて、上下に動かして…」といつのまにかエアギターの手ほどきを受けることに。「な、何をさせられているのだ?!」と思いつつ、「なんだか、ふふっと笑顔になってしまう、楽しさがあるなあ」と感じたのが最初でした。
その後、エアギターにじわりじわりと興味を持ちました。奄美に公式大会がやってくると聞き、あの宴文化(飲みの席で歌い踊る)の奄美でエアギター?!こりゃ、観に行くっきゃない!と観戦を決めました。
実際に観て感じたのは、会場のみんながめっちゃ笑ってて、平和で幸せな空間だなあということ。その楽しさとは…
①純粋に、めっちゃ楽しい
エアーだから何でもあり!上手いとか下手とか考えず、その人が表現してくれる世界に夢中になります。ギターとしてのテクニック(投げる、速弾き、背面引き、風車引き…)がちゃんとあるから見応えもたっぷり。審査員の大真面目で、ときに辛口で、ときに過大評価なコメントも聞いていて面白いです。
そしてそして、わざわざ奄美に行くのですから、「旅」としても楽しみました。鶏飯を食べ、海辺を散歩し、ハブ占いで盛り上がり、地元の焼酎を飲む。奄美を初めて訪れた審査員のみなさんも、「奄美大好きになった!」とのことです。
②1分間に凝縮されたその人の世界を楽しむ
演奏者は、自分の好きなものや得意なものを取り入れて、1分間自分の世界を表現します。例えば、奄美大会に出場したサッカー部の高校生は、ユニフォーム姿で、ギターを蹴り上げ、落ちてくるギターをキャッチして掻き鳴らすパフォーマンスを見せました。これって、エアーだからできること。リアル楽器を手に持っていたらできないことです。
③誰でもエアギタリストになれる
大会に出場したのは、島の高校生や便利屋のおばちゃんなど、エアギターは初めてという普通の人たちです。日本エアギター協会会長のかながわIQ氏曰く、「リアルな楽器に必要とされる“長年積み上げてきたもの”が要らない。勢いで誰でもすぐでできる。素人がどんどん参入し、ボトムが広がれば、エアギターはエンタメとしてもっと面白くなる」。エンタメのプロが、このようなボトムダウン志向を持っていることを、私は面白いなと思います。そしてたしかに、エアギターは誰がやるのを見ても、かなり、面白いのです。
エアギターに、日本のエンタメに、未来あり。です!!
④地方に上陸し、文化を発掘・融合する
「奄美は、どこにでも歌と踊りがある、芸能の島。目に見えないけれど大事な文化が、エアギターと融合して飛び立つきっかけをもらえた。島でエアギター、続けたい」
奄美大会誘致の尽力者で審査員の西氏は大会後、こう言いました。
私は、奄美大会しか見ていませんが、阿波踊り王国・徳島でやったらどうだろう、とか想像が膨らみます。その土地に上陸し、地域の文化を掘り起こし、融合する。エアギターは、地方でこそ面白いエンタメだと思います。
⑤目に見えない可能性を見出そうとする、前向きな姿勢になれる
これが、エアギターの一番のパワーかもしれません。審査員も観客も、演奏を観ていろんなことを楽しそうに話します。
観客の一人で、リアル楽器を演奏するという人がこんなことを言いました。
「楽器をする者として、音が出ることで満足してしまっていたことに気が付いた。エアギターは表情が豊かで、ここはこんな気持ち、ここは客をノリノリにさせてやろう、といった意図が伝わってきた。忘れていたパフォーマンスを思い出させてもらった」
見えないからこそ、想像して、妄想して、もっともっと表現するし、もっともっと見ようとするんだなと思います。
そして、自分も、この文章を書きながら、エアギターやエンタメの可能性をポジティブに思い描いていることに気が付きます。リアルギターの演奏について書けって言われても、たぶんそんなに書けません。
エアーだから、自由に無限に、前向きになれる。今回の観戦の最大の収穫でした。
7月13日は最終予選(湯之元)、14日は日本大会決勝(山形屋ベルク広場)
鹿児島商業高校の地域プロデュース部がどのようにイベントを盛り上げてくれるのだろう。予選を勝ち抜いた全国のエアギタリストたちはどんな人たちなんだろう。天文館にどんな空気が生まれるんだろう。楽しみです。
一緒に観戦しませんか?
3.来週決勝を観ようと思ったあなたへ、エアギター観戦の秘訣
さて、エアギター観たくなってきたぞ、というあなたへ、審査員のコメントで頻出の7キーワードを紹介します。この視点で見るとさらに楽しめるはず!
①「ちゃんとギター弾けてる」
見えないギターが見えるように弾けているか、曲のギター部分でそれらしく弾けているか、は評価ポイントの「エアー感」につながります。「おへそをむずむず掻いている」ようではいけません。
②「のびしろがある」
審査員が常に、「この人にはこんな可能性があるのではないか」という視点でコメントするのが印象的です。
③「フロンティア」
おっこれは新しいなあ、というパフォーマンスが飛び出したとき、この言葉が使われます。
④「ギャップ」
“中年メタボの奏者が軽快なステップを見せた”
そんなギャップにぐっとひきつけられます。
⑤「それはヘヤギター」
自分の世界に没入してものすごく気持ちよさそうに演奏している人へのツッコミです。自分の部屋から出て、人を楽しませることも考えるともっとよくなるよ!という思いを込めて。
⑥「パッケージ」
音楽、衣装、技術、1分間の構成…が、おもしろくてかっこいい一つの作品として仕上がっているか。エンタメを真面目に評価する視点です。
⑦「世界的に評価される」
エアギターは初めてという便利屋のおばちゃんに「もっといろんな技を取り入れれば、世界大会で評価されるよ!」などとコメントします。島の高校生にも、サラリーマンにも、世界への扉は開かれている。それが、エアギター界なのです。
4.おまけ―奄美大会での、出場者、審査員、観客の言行録です。
●出場者紹介
エアギター大会って一体どんな人が出てるの?と思われた方のために。出場者やその演技を勝手な想像も交えて紹介します
【エントリーナンバー1:ビッキャ】(初出場)
会場近くで便利屋を営んでいるという、小柄な女性。
普段からこんなかんじなんだろうなと思わせる、ちょっと個性的な私服。便利屋でもこんなかんじなんだろうなと思わせる、お節介さ漂う愛嬌。ギタリストよりむしろダンサーを思わせる、テクニカルなステップが光りました。
【エントリーナンバー2:ばしばしお】(2回目)
鹿児島商業高校3年。サッカー部。
青い上下のユニフォーム、ハイソックス、赤いシューズ。ギターを空へ蹴り挙げ、降ってくるのをキャッチしてかき鳴らす。サッカーとエアギターの掛け合わせに挑戦!
【エントリーナンバー3:ブラスタのキヨ】(初出場)
出演者の中で一番早く会場に到着し、全然しゃべらないが終始にこにこしていた島在住の男性。目をつむり、舟をこぐように体を揺らし、腕の中のギターを愛で続けた。自分の世界への没頭度はピカイチでした。
【エントリーナンバー4:ひろレオ】(初出場)
大島高校3年。陸上部。島のサニブラウン、といえそうな彫の深い顔立ち。シンプルでノリよく、「夏のビーチでハイボール」のCMみたいでした。「将来の夢は声優」とのこと。
【エントリーナンバー5:初代島のナポレオンマン】(初出場)
島の焼酎蔵に務める男性。焼酎「島のナポレオン」前掛けに、フランスのナポレオン風の赤い衣装。くりくりしたかわいらしい目と超テクニカルなダンスにギャップ萌えでした。
【エントリーナンバー6:エアネスサイゴウ】(5回目。2018年日本2位)
ありとあらゆるエアギターのテクニックをふんだんに盛り込んだ、ひとつぶで何度も美味しいパフォーマンス。繰り返しがほとんどなく、どんどん展開していくので目が離せなせませんでした。導入の中孝介「花」は島民の歓心を買う戦略か?!
●審査員の目‐エアーに何を見る?
審査員は演技のどんな点を観ているのでしょう?エアギターの魅力は?審査員5人に聞きました。
【かながわIQ氏】日本エアギター協会会長。2008年世界大会15位。楽器経験はなし。
エアギターは1分間の自己表現の競技。目に見えないから、自分の世界を繰り広げる余地がある。衣装、照明、ギターパフォーマンスにダンスステップや小芝居、小ネタが加わった、かっこよくて面白い複合エンタメとして出来上がっているか。1分間に起承転結を構成し、自分の物語を詰め込んでくれるかを見たい。
【ピョコタン先生】漫画家、ユーチューバー。楽器経験なし。
エアギターを評価する視点は、いかに自分を楽しませてくれるか、に尽きる。
奄美大会では、「未来ある高校生」と「動ける小太り中年」という二極化した出場者から、後者が全国大会の出場権を得た。
【宮城マリオ氏】ミュージシャン、エアギタリスト、日本エアギター協会幹事長。
ギターを弾ける/弾けないは関係ない。誰でもスターになれる。年齢も国籍も超える。
エアーがリアルを乗り越えて、「そう見せる」驚きが楽しい。ギターだけではない。バンド仲間もマイクスタンドも会場も、全部エアーで自由自在に想像し、そう見せることができる。
【スマイリー園田氏】ミュージシャン
目に見えないものの中に本質があることを感じられる。大の大人が見えないギターをかき鳴らす。ばかばかしいけれど、遊びの中に、人を感動させる大切なものがある。
【西桂吾氏】会場「マヤスコ」のオーナー。奄美大会開催の尽力者。
目に見えないものをプレーし、目に見えないものに感動するって素晴らしい。エアギターを見るのは初めてで、何を審査したらいいのかと戸惑っていたが、「オーラ」を見出せるかが一つの指標になった。この人は何を見せてくれるんだろうとわくわくしながら見た。
●観客の目‐初めてのエアーに何を見た?
初めてエアギターを観たお客さんに聞いた感想を3分類しました。
①とにかく楽しかった系
「ずっと笑ってました」
「飛び込みで出たくなった」
「1分間って短い。盛り上がってもっと見たいってところで終わる」
②エアーだからこそ系
「自分の好きなものや得意なものを取り入れていた。エアーだからできること」
「ギターへし折れてるようなあり得ない動きも飛び出す。実際に楽器やったことがない人も出演するから新しいものが出てくるんだろうな。エアーの面白さだと思う」
「審査員が、見えないものを大真面目に見ようとしてアドバイスする姿が笑えた」
③リアル奏者の「気づき」系
「リアルに楽器する者として、音が出ることで満足してしまっていたことに気が付いた。忘れていたパフォーマンスを思い出させてもらった。表情が豊かで、ここはこんな気持ち、ここは客をノリノリにさせてやろう、といった意図が伝わってきた」
さあ、みなさんは、エアギターにどんな可能性を見出すのでしょう。来週の湯之元最終予選、決勝大会を見たら教えてください!!
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